キャンピングカーの維持費について解説します。自動車税などの法定費用から、任意保険などの必須費用、さらに燃料代など日常的に発生する費用まで詳細にまとめました。
ここ数年「第3次キャンプブーム」といわれ、キャンプやアウトドアに関心が集まる中、2020年以降のコロナ禍の影響もあり、「密」を避けられるレジャーとしてキャンプが一層注目を集めています。
特にコロナ禍以降では、キャンプへのアプローチに公共交通よりも自前の車を使ったオートキャンプの愛好者が増加。さらに、テレビ番組の影響もあり「車中泊」がブームとなり、それにつれてキャンピングカーの需要も増加の一途となっています。
このように多くの人が興味を持つキャンピングカー。見た目が大きくて立派で、いかにもお金がかかりそうだと購入をためらったりあきらめている方も多いのですが、実は意外にも普通車と大差ない負担で所有・使用できるのです。
そもそもキャンピングカーってどういう車?
一口にキャンピングカーといってもいくつかの種類があり、種類によって必要な費用・コストが異なります。本題に入る前に、ここでは維持費に関係する登録ナンバーにも触れながら、種類ごとの特徴を解説します。
バンコン
バンコンとは「バンコンバージョン」の略語で、VAN(バン)を改造(コンバージョン)しているという意味です。商用バンの荷室を改造して居住空間を創出し、ソファーやベッドを備えたタイプのキャンピングカーです。
日本のキャンピングカーの主流は、積載量1t前後の商用バンを改造したバンコンです。車種でいえば、トヨタ「ハイエース」と日産「キャラバン」です(ハイエースのシェアが圧倒的)。また最近では、もう1クラス小さい750kg積みのトヨタ「タウンエース」や、日産「NV200」をベースにしたバンコンも人気が高まりつつあります。
バンコンは主に車両内部を改造し、車両自体の改造はごくわずかに収め、車両のサイズや外観が商用バンのままであるため、居住空間はあまり広くありませんが日常の使途でも違和感なく使え、街中でも目立たず普段使いに適しているのが特徴です。
これらのバンを改造した車両の多くは、税金などの法定費用が優遇されている「1・4ナンバー」商用車登録や、「8ナンバーキャンピング車」登録されることが一般的です。なかには、乗り心地や装備の豪華さを優先し、あえて法定費用の優遇のない「3・5ナンバー」の乗用車を改造するケースもあります。
キャブコン
キャブオーバー型のトラックの荷台に「シェル」と呼ばれる箱を搭載し、内部に居住空間を創出したタイプのキャンピングカーを「キャブコン」といいます。
キャブオーバーとは、エンジンが運転席下に位置し、ボンネットのないトラックを意味しますが、一部にはボンネットがある小型トラックを用いたキャブコンも存在します。
主流はトラックにシェルを架装したタイプで、その他、タウンエースなど小型トラックや、ハイエースの荷室部分を取り払ってシェルを架装したタイプなども人気です。
キャブコンは、全幅・全長を拡大しているため広大で余裕ある室内が特徴で、シェル内を設計段階からデザインできるので使い勝手も良好ですが、反面、外観はいかにもキャンピングカー然としていて、大きく重いので日常シーンでは使いにくい側面を持っています。
外観や構造、大きさ(全長・全幅・全高)を改造しているため、「8ナンバー」登録となります。
軽キャンパー
日本国内では、軽貨物(バンおよびトラック)をベースにしたキャンピングカーも人気で、広く「軽キャンパー」といわれています。軽キャンパーには、バンをベースにした軽バンコンと、トラックにシェルを架装した軽キャブコンの大きく2種類があります。
維持費の面では大きなメリットがあるものの、元々小さい車体をベースとしているため、余裕ある居住空間という訳にはいきません。ただし、軽キャブコンであれば上方向にスペースが稼げるため、2~4名での利用(乗車・就寝)が可能です。
その他のキャンピングカー
バンコン、キャブコン、軽キャンパー以外にもキャンピングカーの種類はたくさんあります。車両の設計段階からキャンピングカーとして開発された「フルコン(フルコンバージョン)」や、既存の車両を用いながら大がかりな改造を施した「セミフルコン」、バスをベース車にした「バスコン」などです。
法定費用~車の所有者が支払う義務を負う法律で定められた費用
乗用車であってもキャンピングカーであっても、車両を所有する場合には「法定費用」がかかります。法定費用とは、法律で定められた車両所有者が負担すべき税金や保険料などを指します。
負担額は車両の登録ナンバーによって金額が定められており、1年ないし2年ごとの定められた期間ごとに支払います。
法定費用は、業務で使用する車両の負担額が軽減されている傾向があり、そのため、キャンピングカーでも、商用車登録、キャンピング車登録とするケースが一般的です。負担額に優遇の少ない乗用車登録が少ないのはそのような理由です。
自動車税
自動車税は、法律によって負担が義務付けられた法定費用で、ナンバーを取得(登録車)したすべての車両が負担する税金です。
下記は、登録・排気量別の自動車税の一覧表です。
排気量 (cc) |
3・5 ナンバー 乗用車 |
3・5 ナンバー 乗用車 |
1・4 ナンバー 自家用貨客 |
1・4 ナンバー 自家用貨客 |
8ナンバーキャン ピング車 |
自家用
軽貨物 |
~2019/9/30 | 2019/10/1~ | 積載1t以下 | 積載1~2t | |||
~999 | 29,500円 | 25,000円 | 13,200円 | 16,700円 | 23,600円 | 5,000円 |
~1,500 | 34,500円 | 30,500円 | 14,300円 | 17,800円 | 27,600円 | |
~2,000 | 39,500円 | 36,000円 | 16,000円 | 19,500円 | 31,600円 | |
~2,500 | 45,000円 | 43,500円 | 36,000円 | |||
~3,000 | 51,000円 | 50,000円 | 40,800円 | |||
~3,500 | 58,000円 | 57,000円 | 46,400円 | |||
~4,000 | 66,500円 | 65,500円 | 53,200円 | |||
~4,500 | 76,500円 | 75,500円 | 61,200円 | |||
~6,000 | 88,000円 | 87,000円 | 70,400円 | |||
6,000~ | 111,000円 | 110,000円 | 88,800円 |
3・5ナンバーの乗用車(2019年10月1日以降の登録車から税額改定)、1・4ナンバーの自家用貨客車、8ナンバーの特種用途自動車、軽自動車の貨物車によって税額が異なります。
自動車税額は、業務に使用する商用車(自家用貨客・軽貨物)が圧倒的に優遇に設定されています。8ナンバーキャンピング車も乗用車に比べると割安な設定です。
自動車重量税
自動車重量税は、車検ごとに支払う税金で、車両の重量に応じた税額が定められています。
下記一覧表では、商用車の車検期間が1年であるため、2年車検の乗用車・8ナンバーキャンピング車も1年間の税額に合わせてあります。
重量 | 3・5ナンバー 乗用車 |
1・4ナンバー 商用車 |
8ナンバー キャンピング車 |
自家用 軽貨物 |
~500トン | 4,100円 | 3,300円 | 4,100円 | 6,600円 |
~1,000 トン | 8,200円 | |||
~1,500 トン | 12,300円 | 6,600円 | 8,200円 | |
~2,000 トン | 16,400円 | |||
~2,500 トン | 20,500円 | 9,900円 | 12,300円 | |
~3,000 トン | 24,600円 | 12,300円 |
重量税に関しても、商用車は割安な設定ですが、8ナンバーキャンピング車も乗用車に比べると安い税額となっています。
自賠責保険料
自賠責(自動車損害賠償責任保険)は、加入が法律で義務付けられた損害賠償保険です。車検期間による違いがあるので、1年間または2年間の費用として記載しています。
車種 | 24ヵ月 | 12ヵ月 | |
自家用乗用車 | 20,010円 | 12,700円 | |
軽自動車 | 検査対象車 | 19,730円 | 12,550円 |
自家用普通貨物 | 2t超 | 36,710円 | 21,130円 |
自家用普通貨物 | 2t以下 | 32,730円 | 19,120円 |
自家用小型貨物 | 23,150円 | 14,280円 | |
8ナンバーキャンピング車 | 22,450円 | 13,930円 |
自賠責保険料に関しては、商用車も軽自動車も乗用車と大差ない保険料となっています。
車種別の年間法定費用まとめ
下表は、1年間の法定費用を車種別にまとめたものです。「軽貨物」を除いて、排気量2,000cc・車両重量2.5t未満の車両をモデルケースとしています(2年車検の車両は1年に換算)。
項目 | 乗用車 | 小型商用車 | 普通商用車 積載2t以下 |
8ナンバー キャンピング車 |
軽貨物 |
自動車税 | 36,000円 | 16,000円 | 19,500円 | 31,600円 | 5,000円 |
重量税 | 20,500円 | 9,900円 | 9,900円 | 12,300円 | 6,600円 |
自賠責保険 | 12,700円 | 14,280円 | 19,120円 | 13,930円 | 12,550円 |
合計 | 69,200円 | 40,180円 | 48,520円 | 57,830円 | 24,150円 |
多くの人がお金がかかると考えているキャンピングカーは、意外にも、税務上で優遇されており、乗用車よりも費用負担が小さいことがわかります。若干割高な自賠責保険料を加えても、年間トータルの負担額は乗用車を下回ります。
もちろん、軽貨物が圧倒的に負担額が少ないのは確かですが、有効なスペースや利用可能な人員が限られる点で、すべての人におすすめできるものではありません。
必須費用~法律で義務付けられてはいないが必ず必要なコスト
法律で定められてはいないものの車両を所有・利用する際に必要となる費用やコストを、ここでは必須費用としてまとめました。
万が一、事故を起こした際の賠償を考えると任意保険は必須と言えますし、整備・メンテナンスの費用は法律では義務付けられていないものの、1~2年ごとの車検が義務付けられているため、付随する整備・メンテナンス費用も必須です。
駐車場料金についても同様で、車両購入時に「車庫証明」の提出が義務付けられているため、自己所有の駐車スペースがない場合には、必然的に駐車場料金が必須となります。
任意保険料
任意保険は文字どおり、任意で加入する自動車保険です。キャンピングカーを買い換えの場合には、従来の任意保険の車両区分を変更して契約を継続できます。買い増しの場合には、多くの保険会社で2台目契約として割引制度が適用されます。
保険料は各社で異なりますので実際の金額は保険会社に問い合わせていただくしかありませんが、キャンピングカーは、全体的に乗用車より若干割高な掛け金となる傾向です。
車検費用、整備メンテナンス費用
乗用車、8ナンバーキャンピング車、軽貨物(キャンピングカー含む)は2年ごと、商用車ベースのキャンピングカー、車中泊仕様車(1・4ナンバー)は1年ごとに車検を受けることが義務付けられています。
車検時の費用(重量税・自賠責保険料)は以下のものが含まれます。
- 自動車重量税や自賠責保険などの法定費用
- 車検を通してもらうための車検代行料
- 車検前におこなう整備・メンテナンス料金
- 部品代(オイル交換、エレメント交換等の部品実費)
- 預かり車検(1~2泊)の場合はディーラーなどへの交通費
法定費用は先に解説していますが、車検時におこなう整備やメンテナンスにも費用がかかりますし、車検代行を依頼すれば手数料がかかります。また、オイル交換を行えばオイル代が実費で、タイヤローテーションを行えば手数料がかかります。
多くのキャンピングカーは、カーディーラーではなくキャンピングカー専門店で購入しますが、ベース車両の車検および整備点検も請け負ってくれるケースがほとんどです。
駐車場料金
キャンピングカーに限らず車両を購入すれば、必ず「保管場所」としての駐車場が必要で、購入時には「車庫証明」の提出が義務付けられています。そのため、自己所有の駐車スペースを確保できる場合を除き、自動車保管場所を借りるための料金が必ず発生します。
車体の大きさで駐車場料金が違うケースもあり、特にキャブコン以上の大型キャンピングカーは普通車1台分の区画に入りきらないため、2台分を契約するなど、コスト負担が大きくなりがちです。
車体サイズによっては駐車場料金が嵩むのは致し方ない側面もありますが、場合によっては貸し出し自体を断られるケースもあり、都市部での駐車場問題は大型キャンピングカーの弱点の1つです。
自動車保管場所が自宅から2km超の場所でもOKな場合
自動車保管場所は、本来、自宅から2km以内という制約がありますが、全長5.7m・全幅1.9mを超える場合に限って、2kmを越す場所での保管が認められており、そうした大型キャンピングカー向けの預かりサービスもあります。
ただしこの場合、保管場所までの移動に用いる別の車両も必要なため、コスト負担はかなり増大します。
日常的にかかるランニングコスト
キャンピングカーを所有し、いざお出かけという際には、さまざまなコストが必要です。車両を動かすためには燃料が必要で、随時補充しなければなりませんし、出かけた先での駐車料金も必要です。
また、高速道路や有料道路の道路利用料、オートキャンプ場やRVランドなどの施設利用料まで、車両を安全に快適に運航し、アウトドアを楽しむために必要な費用やコストがついて回ります。さらには、エンジンオイルや冷却水、ウインドウウォッシャー液など、消耗品の補充もランニングコストの1つです。
燃料費
ランニングコストの最も身近なものが燃料費です。一口にキャンピングカーといっても、車両のさまざまな条件によって燃費は大きく異なります。
燃費に影響を与える仕様
エンジンと燃料の違い:ガソリン車、ディーゼル車
駆動方式の違い:2WD、4WD
変速機の違い:オートマチックミッション車、マニュアルミッション車
特に、エンジンと燃料によるコストの違いは顕著で、多くの場合、ディーゼル車のほうが燃費が良好なうえに、燃料代も軽油のほうが割安のため、ランニングコストとしての燃料費は大きな差が出ます。
例えば、2,000ccのガソリンエンジンのバンコンの平均燃費は6~8km/Lほどですが、同型車の2,700ccのディーゼルエンジン仕様では、8~10km/Lほど走ります。年間1万km走り、ガソリン150円/L、軽油125円/Lとした場合、ガソリン車は年間≒1430Lで214,500円、一方のディーゼル車では≒1,110Lで138,750円で済み、年間75,000円ほどの差が生じることになります(ただし、ディーゼル車はガソリン車に比べて車両自体が50~100万円割高であり、燃料代の差額で埋めるためにはおよそ7~13年間かかる計算です)。
その他、2WD車より4WD車のほうが燃費は悪いですし、ATかMTかでも燃費は違いますが、それは乗用車でも同様です。商用車ベースのバンコンであれば、乗用車と大差ない燃費での利用が可能です。
道路利用料
有料道路、高速道路を利用する際の利用料金です。1・4ナンバーのバンコンも、8ナンバーのキャブコンも、乗用車区分となるので、高速料金に関しては、ナンバーによる差額はあまりありません。
施設利用料
キャンプ場、RVランドなどの施設利用料金です。
昨今人気の「車中泊」は、高速道路のSA・PAや、道の駅などは「車中泊」を禁止している場合もありますし、原則はあくまでも安全のための「仮眠」しか認められていないケースが大多数です。キャンプをするにしても、車中泊をするにしても、キャンプ場やRVランドなどのキャンピングカーで宿泊可能な施設の利用には、個々で定められた利用料金がかかります。
とはいえ、旅館やホテルなどの宿泊施設の宿泊料金と比べれば大幅に宿泊費を節減できるのがキャンピングカーの人気の理由の1つです。
消耗品・部品のコスト
例えば、エンジンオイルやエレメントは一定期間ごとの交換が必要ですし、冷却水やウインドウウォッシャー液は減った分だけ補充が必要です。さらに灯火類の玉切れがあれば要交換ですし、長い目で見ればタイヤの溝が減ればタイヤ交換も必要となります。
車両を活用すればするほど、消耗品の補充・交換頻度はあがりますし、部品の損耗も激しくなりコストがかかります。
登録ナンバーごとの維持費関連のメリットとデメリット
キャンピングカーの維持費については、車体の形状や大きさではなく、登録ナンバーごとに3・5ナンバー乗用車との比較で考えた方が分かりやすい場合もあるため、以下にまとめました。
種類 | メリット | デメリット |
1・4ナンバーキャンピングカー | ・3・5ナンバー乗用車に比べて自動車税・重量税などの法定費用に優遇がある
・高速道路料金は普通車と同料金、駐車場も普通車区画が利用できる ・車体の量増があまり大きくなく、ベース車両に近い燃費で運航できる |
・車検は1年ごと(毎年車検)のため、車検費用が毎年かかる
・車検ごとに整備・点検を実施、重量税・自賠責保険を支払う ・法定費用は優遇されるが、自賠責保険料は若干割高となる |
8ナンバー
キャンピングカー |
・3・5ナンバー乗用車に比べて自動車税・重量税などの法定費用に優遇がある
・車検は2年ごとで、整備・メンテナンス費用が抑えられる ・重量税・自賠責保険の支払いが2年ごと ・高速道路料金は乗用車と同じ料金で通行できる |
・車体が大きく重いため、燃費は良好とはいえない
・駐車場は1台分の乗用車区画に入りきらないため割高となる |
キャンピングカーの維持費は思っているより高くない
キャンピングカーの維持費について解説してきました。キャンピングカーは思っているより身近で手の届きやすい存在であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
人気のハイエース以下のクラスのバンコンは、法定費用面での優遇に加え、燃料代、道路利用料、宿泊費などを節減できるケースも多々ありますし、本格的なキャブコンでは、豪華なリゾート感が味わえますが、8ナンバーの優遇により法定費用の負担は思いのほか軽いことがわかます。
全体としてみた場合、キャンピングカーは税金などの法定費用は、むしろ乗用車よりも優遇されていますが、車種によってはランニングコストが嵩むケースもあるので、用途にあったキャンピングカーを見つけることが重要です。