キャンピングカーであっても燃費がよいに越したことはありません。これは誰しもが思うことですが、キャンピングカーに関してはベースの車両よりも車重が増しているため、ベース車よりも燃費がよいケースはほとんどありません。
しかし、燃費の改善も不可能ではなく、工夫によっては1Lあたり数kmの改善も十分にあり得ます。
ここでは、キャンピングカーの燃費を左右する3要素と、少しでも燃費を向上させる方法について考えてみます。
キャンピングカーの燃費を左右する3つの要素とは
キャンピングカーに限らず自動車(クルマ)の燃費を左右する要素は大別して「重量」「走行」「エンジン」の3つです。
この3要素をどう考え対処するかによって燃費に差が生じますし、燃費以外の部分にも影響を与える可能性があります。
重量
重量、つまりクルマの重さです。クルマの燃費を考えるとき、どれだけの重さのものを運ぶかは非常に重要な問題で、誰しもがわかるように、軽ければ軽いほど燃費にはプラスに働きます。
重量は下記の3つに関係します。
- 車両車重
- クルマ自体の重さであり、車検証に記載されている「車両重量」や「車両総重量」にあたります。車両総重量は乗員や荷物を積んだ状態の重さのことで、乗用車の場合は最大乗車定員(1名55kgで計算)が乗った状態、商用車の場合は最大乗車定員と最大積載量を積み込んだ場合の重さです。
- パーツや装備など
- ナビ、オーディオ、ETC、バックモニターなど、クルマを安全・快適に運転するための装備やパーツの重さです。
- 積荷
- クルマに積み込む荷物の重さです。キャンピングカーなら、椅子やテーブル、コンロや焚き火台、炭・薪やガスボンベ、ポータブル電源などのキャンプ用品などです。クーラーボックスに満載の肉や野菜などの食料・飲料水や、自転車やカヌーなどのアクティビティももちろん含みます。
走行
キャンピングカーの運転、つまり「走らせ方」が燃費に大きく影響します。
クルマの運転は、発進・走行(加速・減速)・停止を繰り返しますが、特に発進と走行時の加速の際の燃料消費は大きいです。
発進時にはアクセル開度が大きいことが燃費に大きく影響します。例えば、信号が青になったらアクセルを床まで踏みつけて急発進するような運転では良好な燃費にはなりません。また、走行時にも無駄な加速を減らす意識を持つことで燃費の改善が可能です。
前方の信号が赤なのに停止位置直前までアクセルを踏んでいるような運転も、無駄な燃料消費といえます。さらに、車間距離を十分にとっていないと、先行車の挙動のたびにブレーキを踏むことになり、その分はアクセルを踏んで再加速しなければならず、これも燃費悪化の一因です。
エンジン
エンジンの形式や使用する燃料によっても燃費が左右されます。
ハイオクガソリン仕様のV8エンジンを想像してみてください。「さぞ燃費がよいのだろうな」と思う人はいないはずです。大排気量より小排気量、ガソリンエンジンよりディーゼル、さらにハイブリッド、EVが燃費には有利ですし、4WDより2WD、オートマよりマニュアルミッション……となります。
とはいえ、エンジン形式や駆動方式、変速機の選択は、燃費や操安性、車両価格とのトレードオフになる場合があります。ガソリンエンジンよりディーゼルエンジンの方がエンジンそのものの燃費もよいうえに、燃料代として見た場合、ガソリンより軽油が割安ですが、車両価格はディーゼルエンジン車はガソリンエンジン車より割高な傾向です。
2WDよりも4WDの方が積雪時や悪路の走破性は高いですが、燃費は4WDのほうが悪く車両価格も割高です。また、マニュアルミッションよりオートマティックミッションの方が運転は楽ですが、オートマティックミッションのほうが燃費は悪く車両価格も割高、といった具合です(最近はシーケンシャル車両、クラッチフリー、CVTミッション(無段変速)など、データ上ではマニュアルミッション車より燃費のよいオートマミッション車も多くなってきています)。
用途に見合った大きさのキャンピングカーを選び、そのなかで適切なエンジンや駆動方式、使用燃料をチョイスすることが重要です。
キャンピングカーの燃費を向上させる4つの対策
前項で解説した燃費を左右する3要素を踏まえたうえで、実際に燃費を向上させるための4つの対策をご紹介します。
状況によってはすべての条件を同時に叶えることはできない場合もありますが、1つでも多く実現することで、実燃費を向上させることができるはずです。
用途にあった仕様の車種を選ぶ
用途に合った仕様の車種を選ぶことで、無駄な燃料代の節約につながります。
必要以上に大きなキャンピングカーは燃費を悪化させる要因となるので、購入時には充分な検討が必要です。例えば、夫婦2人でしか使わないのに、5人乗車・就寝の大きなキャンピングカーはオーバーサイズな可能性があります。
また、雪道にはほとんど行かないのに4WDを選択したり、高速道路を走らない(スピードをあまり出さない)のに過度にパワーのある車両を選んだりすると、不必要に燃料を消費することになります。
不要な装備、積載量を減らす
不必要な装備を搭載するのも燃費には芳しくない影響を与えます。例えば、自転車に乗らないのにサイクルキャリアを装備する、車中泊をしないのに車載サブバッテリーを装備するなどです。
重複したり使用しないオプション装備を装着しない、使わない装備はキャンセルする、キャンプ用品は絞り込むなどによって、燃費を向上させることが可能です。
なお、ETCは燃費向上に寄与する可能性が高いです。高速利用時に料金所で停止して料金支払いをする場合、その都度停止からの発進加速となりますが、ETCを装着していれば減速は必要ですが停止しないので、再加速時の燃料消費はわずかながら抑えられます。
急な運転操作や無駄なアイドリングは厳禁
急なアクセル、ブレーキ操作は要注意です。アクセルはじんわりと踏み込むことが燃費向上につながりますし、せっかく出した車速を急減速してしまうことも燃費悪化の要因になります。
また、オートマ車の場合には、アクセルを一定に踏んだままより、シフトアップのタイミング(車速や回転数)で少しアクセルを戻す(閉じる)ことで、シフトアップが促されます。
ただし必ずしも低回転なら燃費がよいわけではないので、最もエンジンが効率よく働く(最大トルクを発生する)回転数を使用するなど、無駄のない操作が燃費を向上させます。
また、車間距離を多めにとることで、先行車の挙動に影響されにくく、ブレーキ頻度を少なくアクセルと一定開度で走行しやすくなり、燃費向上につながります。
暖機運転も燃費悪化の大きな原因です。最近のクルマは、暖機運転はほとんど必要ないと言われています。エンジン始動から回転が落ち着く数秒後には発進して問題ありませんし、エンジンが暖まるまでは速度やエンジン回転を控えめにすることで、走行しながらの暖機運転が可能です。
さらに、停車・駐車中はエンジンを切り、無駄なアイドリングは避けましょう。
日頃のメンテナンス
日頃の点検整備などメンテナンスも燃費向上に役立ちます。キャンピングカーが本来の性能を充分に発揮できる状態にしておく、日頃のメンテナンスが重要です。
例えば、タイヤが適正以下の空気圧になると転がり抵抗が増え燃費に影響しますが、適正圧以上にするとバーストの危険が増すので、常に適正圧を保つよう小まめなチェックが肝要です。タイヤは4本でクルマを支える重要部品ですが、普通車より車重の重いキャンピングカーは特にタイヤの状態には気を配るべきです。
また、古くなったエンジンオイルやクーラントなども性能が発揮できず燃費悪化につながります。エンジンオイルは、オイルの種類にもよりますが、半年に1回または4,000km~5,000kmの走行を目安に、オイルエレメントは1年に1回または10,000kmの走行を目安に交換するとよいでしょう。キャンピングカーは重量があり、普通の車よりもエンジンの回転数が高めになるため、早めの交換をおすすめします。
シビアに考えすぎてもつまらない
いつでも好きなときにエンジンをかければすぐに出発でき、宿の予約など宿泊に関する制限が少ないのがキャンピングカーの魅力です。あまりにも燃費向上最優先となって、余計なものを載せない、無駄な装備やスペースは無くすということばかりになると、せっかくのキャンピングカーのよさを活かせなくなります。
燃費が悪化するからと行程にアップダウンが多い山間部の施設は利用しないなどとすれば、キャンピングカーの楽しみはそれこそ半減してしまうでしょう。
もともと実用車ではないキャンピングカーは、多少気持ちにゆとりを持ったほうが楽しめることもまた事実です。宿泊費まで込みで勘案すれば、キャンピングカーで出かけること自体がすでに節約になっているともいえるので、キャンピングカーやアウトドアの楽しみを阻害しない範囲での燃費向上を心がけることで、楽しいキャンピングカーライフが実現するはずです。
基本を押さえて無理のない対策を
キャンピングカーの燃費について考えてきました。
キャンピングカーといえどもクルマである以上、燃費は考えざるを得ない問題です。誰だって、燃費が悪いよりよいほうがうれしいのは確かですが、キャンピングカーや、キャンピングカーを使ったレジャーの楽しみを減らしてしまったり、阻害するような極端な燃費対策はおすすめできません。
無理なく実現可能な燃費対策を講じたうえで、キャンピングカーのよさを楽しんでいただきたいと思います。