キャンピングカーのベッドは、車中泊の最も大切な要素となる基本装備です。「寝泊まりすること」に大きな価値を置くキャンピングカーでは、ベッドの快適さが旅の主役になるといっても過言ではありません。
本記事では、キャンピングカーのベッドを5種類ピックアップし、その特徴やメリットを紐解いていきます。
キャンピングカーの就寝設備と注意点
まずはキャンピングカーの就寝設備の規定や、使用上の注意点を知っておきましょう。
キャンピングカーとは、「車室内に居住して寝泊まりする」ための自動車全般のこと。ベッドの数や構造、サイズなどが構造要件として定められています。
広さと形状の規定
キャンピングカーの構造要件のうち、ベッドに関しては次の項目が規定されています。
- 就寝設備の数
- 乗車人数の3分の1以上の大人用ベッドを有すること
- 大人用ベッドの構造と寸法
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- 水平かつ、大人が十分に就寝できる構造であること
- 1人当たり長さ1.8m、幅0.5m以上のサイズを有すること
- ベッド上部から縦方向に0.5m以上の空間があること
- 子ども用ベッドの構造と寸法
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- 水平かつ、子どもが十分に就寝できる構造であること
- 1人当たり長さ1.5m、幅0.4m以上のサイズを有すること
- ベッド上部から縦方向に0.4m以上の空間があること
- 就寝設備と座席の兼用
- 就寝設備と座席との兼用は不可(例外を除く)
加えて、折りたたみ式や収納式などのベッドの場合は、展開した状態で以上の要件を満たす必要があります。
走行中のベッド使用は禁止
前述の通り、キャンピングカーは「車中泊を楽しむための車」ですが、この前提は停車時にのみ適用されます。というのも走行中は、シートベルトを装着する義務が発生するため、ベッドに横たわることが違反事項になるからです。
以下に、「道路交通法第71条の3」の2項目を抜粋します。
- 第1項
- 自動車の運転者は、(中略)当該自動車に備えなければならないこととされている座席ベルトを装着しないで自動車を運転してはならない。
- 第2項
- 自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(中略)に乗車させて自動車を運転してはならない。
走行中は正しい運転・乗車姿勢を保つ必要があり、寝台の利用をはじめ、シートのリクライニングを完全に倒すことも許されません。
例外が認められているのは、救急車や患者搬送車などの一部指定を受けた医療用車両のみです。いかなる道路渋滞や早朝・深夜移動の際にも、安全な場所に駐車してはじめて、ベッドスペースの機能を発揮することができます。
キャンピングカーのベッド様式5選
キャンピングカーのベッドは、主に「常設式」と「展開式」に大別されます。ここでは、それぞれの特徴やメリット、注意点を5種類に厳選して紹介します。
- 常設式
- バンクベッド、2段ベッド、据え置きダブルベッドなど
- 展開式
- プルダウンベッド、ダイネットベッドなど
1. バンクベッド
バンクベッドの「bunk」は船舶の寝棚を意味しており、本来は2段ベッドの総称です。キャンブコンなどの大型キャンピングカーに多く見られ、運転席の上部に施された常設ベッドを指しています。
簡易的なイメージながら1~3名の就寝が可能であり、荷物置き場などの収納効率にも秀でているのが利点です。
バンクベッドのメリットと注意点
- 隠れ家のような感覚で、寝泊まりや車窓からの景色を楽しむことができる
- 独立した空間として保持できるため、ベッドスペースが汚れにくい
- 頭上部分に設置されているため、気温の上がる夏場は過ごしにくい
- 階段を登ったり降りたりする手間がかかる
2. 常設2段ベッド
バンコンやキャブコンなどに幅広く採用されているのが、常設式の2段ベッドです。大型車に多いダブルベッドのような高級感には届かないものの、それでも広々としたラグジュアリーな室内空間を演出できます。
ベッドとしての造りや寝心地には定評があるほか、就寝スペースの問題を解決しやすいのが何よりの魅力です。
常設2段ベッドのメリットと注意点
- 家族間や友人同士のパーソナルスペースを維持できる
- 大人でも十分なサイズ感があるためストレスフリー
- 寝具を広げたまま放置することができる
- 上下段での体感温度が異なるため、エアコン機能の調整が難しい
3. 据え置きダブルベッド
アメリカンモデルに代表されるのが、まさに寝室の体を成している常設式ダブルベッドです。車内であることを忘れるようなスタイリッシュな機能美を兼ね備えており、広さや快適さ、強度なども随一といえます。快眠に誘ってくれるマットレスのクッション性やレイアウトへの人気も一際高いベッドタイプです。
据え置きダブルベッドのメリットと注意点
- 長期滞在に際しても自宅のベッドのように快眠できる
- ベッドの下部に収納機能を有するものが多い
- ベッドの展開や収束が不可能なため、居住スペースが狭くなりがち
4. プルダウンベッド
キャブコンに特有のバンク(寝台)部分を抑え込み、空気抵抗を減らすために考案されたのがプルダウンベッドです。天井部に装着されているベッドを引き下ろして使うことから、デザイン性や収納術の面で高評価を得ています。
欧州をはじめとする輸入車の間で主流となっているベッドタイプです。
プルダウンベッドのメリットと注意点
- ベッドメイクを短時間で行うことができる
- コストが掛かるため、国産車ではほとんど採用されていない
5. ダイネットベッド
「ダイネット(dinette)」とは、テーブルや座席で構成されるリビングスペースのこと。その名の通りに、シートやマット部分をつぎつぎに展開して寝泊まりする仕様になっています。
ダイネットベッドはキャンピングカーの定番的なレイアウトとして、およそ9割の軽キャンパーやバンコンなどに見られるタイプです。
ダイネットベッドのメリットと注意点
- リビングとベッドスペースを兼ねているため、スペースの不足分が解消できる
- マット同士の継ぎ目が多い分、体への負荷を感じやすい
睡眠の質を高めるベッド選びを
キャンピングカーのベッドは、代表的な5種類以外にもさまざまな趣向のモデルが登場しています。ベッドは車中泊を下支えしてくれる基本装備のため、どの車両を購入すべきかの判断材料ともなるものです。キャンピングカーを検討する際は、あらためて寝泊まりすることの観点を重視しながら、お好きなベッドタイプにも注目してみてください。