キャンピングカーにキッチンを据え置くことのメリット・デメリットのほか、利便性を随所に散りばめたキッチンの各設備について見ていきます。
ハリウッド映画などでは、キャンピングカーでコーヒーブレイクを楽しむカットが度々登場しますよね?あの牧歌的な情景を生み出しているのが、キャンピングカーの代表的な設備であり、今回テーマとしている“キッチン”です。キャンピングカーを「第2のホーム」として捉える場合に、キッチンの存在意義は多様な意味合いを持ちます。
キャンピングカーへのキッチン導入と構造要件
キャンピングカーのうち、8ナンバーを冠する「特種用途自動車」には、以下のような構造要件が設けられています。特種用途自動車とは、国土交通省によって定められた設備を有する車両のことで、8ナンバー以外のキャンピングカーは対象外となります。
水道設備と炊事設備(キッチン)に関する構造要件
- 10L以上の水を貯蔵できるタンクがあり、タンクから流し台に水を供給する機能があること
- 0.3m×0.2m以上の広さの調理台があること
- 炊事可能なコンロがあること
- 耐熱性・耐火性に優れ、窓や換気扇などで十分な換気ができること
- LPガス容器などの燃料タンクは、車内と隔壁で仕切られた場所に設置すること
- キッチンや流し台周辺に、床面から高さ1.6m以上の空間があること
上記は、キャンピングカーにおける「炊事設備の在り方」を法的に説いたものですが、8ナンバー車以外も含めると、キッチンには数多くの展開例があります。キッチンは一般的にシンクとコンロで構成されていますが、「調理用の熱源がどのタイプか」によって次のようにカテゴライズすることが可能です。
- 組み込み式
- 一般的な調理に適した熱源が標準搭載されているタイプ(大型車に多い)
- 取り付け式
- カセットコンロや電子レンジなどの熱源を外部から据え置くタイプ(軽キャンパーなどの小型車に多い)
これらのキッチン設備を導入するにあたっては、キャンピングカーの車種やオプション、用途とよく照らし合わせてみる必要があります。キッチンのタイプはさておき、お湯やコーヒーを沸かすための熱源程度はあった方が、車中泊のおもむきを感じられるかもしれません。また、自宅以外に水道やガスなどのインフラ設備を確保しておくと、万が一に備えて安心することができます。
キッチン設置による5つのメリット
キャンピングカー用のキッチンを検討するにあたっては、次のメリットをご参考ください。
- 旅先での栄養・体調管理がしやすい
- 地元食材を用いたキャンプ料理を堪能できる
- 天気の急変などに際し、アウトドアから車内での食事に切り替えできる
- 旅行中の食費を抑えられる
- 飲み物やレトルト食品を自由に加熱調理できる
キッチン付きのキャンピングカーの利点は、旅先でのあらゆる食事シーンに及びます。アウトドアの延長線上でキャンプ飯を楽しむことができたり、新鮮な農産物や釣った魚にその場で舌鼓を打ったり、好きな時に軽食や飲み物を温めたりすることができます。
車内のキッチンと屋外グリルの合せ技により、大人数で楽しめる「本格お外レシピ」にハマる人も少なくありません。何より、長旅ではかさみやすい食費を節約しながら、家族の栄養面に配慮できるのもキッチンがあればこそ。キャンピングカーにキッチンが設置されていれば、個々の食事情や健康志向を守ることができるのも大きな魅力です。
キッチン設置による5つのデメリット
対して、キャンピングカーにキッチンを据え置くデメリットも把握しておきましょう。
- 吸水・排水処理に手間が掛かる
- 油汚れや焼き物の匂いがこもる
- 軽キャンパーなどは特に、車内スペースが狭くなる
- ポリタンク内を清潔に保つための洗浄作業が必要
- RVパークなどの施設の利用で事足りる
第一のマイナス要素は、シンクの使用にともなう給水・排水作業の煩わしさです。はじめに給水タンクに水を注入しておきますが、10~20Lの容量であればすぐに使い切ってしまうため、洗い物の度に補給しなくてはならない場合があります。加えて、汚れた水を溜めておく排水タンクの処理や洗浄が欠かせないのも難点です。
また、キッチンの設置場所めぐっては、特に車体が小さな車種ではスペース上の問題が起こりやすくなっています。車内での調理にこだわりがなければ、レジャー施設などのキッチンや水道設備を随時活用するといいでしょう。
キャンピングカーの主要なキッチン設備
キャンピングカーにおけるキッチン設備は、一般的に次のアイテムで構成されています。
- シンク
- コンロ
- 電子レンジ
- 冷蔵庫
実際は、快適なキッチン空間となるよう、旅の用途に合わせて各パーツを選定するようにしましょう。
シンク
シンクは、食器洗いに限らず、洗顔や歯磨きなど、キッチン設備において特に利用頻度が高いです。ステンレスなどの多様な素材と形状が見られ、機能性や耐久性に優れた造りとなっています。水道は給水タンクから電動ポンプで汲み上げたのち、シンク下の排水タンクに溜める形で使用可能です。
コンロ
火の元や換気に細心の注意を払うべきパーツであるコンロ。備え付け式のコンロは、海外車種に多い「プロパンガス」のほか、国産車の主流である「カセットガス」や「IH」を熱源としています。加熱方式の選択にあたっては、各々のメリットを確認しておきましょう。
プロパンガスの効用
- 火力が非常に強く安定しているため、冬場でも調理がしやすい
- 供給インフラが全国各地に整備されている
カセットガスの効用
- 火力に即効性があるため、短時間での調理が可能
- 旅先でガスが切れた場合にも、全国のコンビニやスーパーで簡単に入手できる
IHの効用
- 熱伝導率が高く食材が温まりやすい一方で、車内周辺の温度は上がりにくい
- 火気が出ないため、火災や火傷を負う危険性が少ない
電子レンジ
電子レンジは、車旅のお手軽調理にぴったりなキャンパー向きの装備です。お弁当やレトルト食品を温める以外に、具材をチンして作る時短料理などにも用いられます。
ガスコンロでの調理工程と比べても圧倒的に手軽かつ、火を使わないことによる安心感が得られるのも利点です。一方で電子レンジの消費電力は大きいため、サブバッテリーの容量やインバーターの出力に注意しなくてはなりません。電子レンジを快適に使用するには、1200~1500W対応の大容量インバーターを使うようにしましょう。
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冷蔵庫
旅行中に仕入れた特産品やお土産を保存しておく際に、重宝するのが冷蔵庫です。家庭用に使われる気化圧縮式の冷蔵庫から、携帯に便利なポータブル式まで種類は豊富にあります。
冷蔵庫選びの際は、冷却方式などの性能や置き場所をチェックしておくようにしましょう。
旅の趣旨から自由にキッチン装備を考えよう
キャンピングカーは本来キッチンありきの車両として、車内での調理を愉しみ味わうための役割を担っています。確かにキッチンがあれば、車中泊を健康的で豊かなものにしてくれますが、設備の手入れや火の取り扱いにも注意しなければなりません。いずれにしても、車旅の目的がご自分の中ではっきりすれば、キッチンや熱源をいかにするか方向性が見えてくるでしょう。