キャンピングカーの水回り設備や給水・排水などの仕組みを解説します。
自由に移動し、思い思いの場所でキャンプができるキャンピングカーですが、購入を検討する際に特に気になるのは水回りといわれています。キャンピングカーの水回り設備をはじめ、1日あたりに使用する水の量、あるいは給排水の仕組みや使い方を理解したうえで愛車選びをしたいものです。そこで、キャンピングカーの水回りや水の使用量および給排水設備をお話しします。
キャンピングカーで水をどのくらい使用している
移動式宿泊設備ともいえるキャンピングカーには、一体どのような水回り設備が備わっているのでしょう。まずは、キャンピングカーで水を使用する場面や、備え付けられる水回りの設備を紹介します。しかしながら、設備を整えたところで、キャンピングカーで持ち運べる水の量は限られており、普段の生活のように好きなだけ使用できません。確保すべき水の量の把握に向けて、キャンピングカーでの水の使用量も解説します。
キャンピングカーで水を使用する場面とは
お出かけ先で水を使用する場面は、調理や食器洗い、お手洗い、洗面、そしてシャワーです。これらの用途に応じて、キャンピングカーに、ギャレー(流し台)、トイレ、洗面、シャワーを備え付けられます。とはいえ、すべての設備を備えるには大きなサイズのキャンピングカーが必要となることから、車のサイズにより備え付ける設備を取捨選択しなければなりません。
スペースが限られている軽キャンピングカーでも、最低限の水回り設備としてギャレー(流し台)を備え付ける場合が多いようです。トイレ、洗面、シャワーは、同伴者やキャンピングカーの使用目的に応じて備え付けられています。子供同伴の方はトイレを付け、スポーツをされる方はシャワーを付けるなど、使用場面を想定するとよいでしょう。なお、今日では災害時の避難所として、全ての水回り設備を備え付けられる方が増えてきました。
キャンピングカーでの水の使用量はどのくらい
キャンピングカーで旅行する場合、どのくらい水を確保しておけばよいのでしょうか。具体例をもとに水の使用量を計算してみましょう。
東京都水道局の資料によると、1分間に約12リットルの水が出る水道を使用した場合、1日1人あたりの水の使用量は以下のとおりです。
歯磨き:約6リットル(30秒間流しっぱなしの場合)
食器洗い:約60リットル(5分間流しっぱなしの場合)
シャワー:約36リットル(3分間流しっぱなしの場合)
合計:約114リットル
参考:東京都水道局
しかし、キャンピングカーでこれだけの量の水を使用するのは現実的ではありません。そこで、次のように水の使用量を抑える工夫が必要となります。
食器洗い:約6リットル(汚れをキッチンペーパーで拭き取りかつためすすぎで洗う)
シャワー:約18リットル(水圧を1分間に約6リットルに抑える)
合計:約26.1リットル
なお、トイレは固定式やポータブル式、あるいは製品により、1回あたりの水の使用量が0.2~1.0リットルと幅があります。
キャンピングカーの給排水の仕組みとは
それでは、いったいキャンピングカーにはどのくらい水が積めるのでしょうか。キャンピングカーの給排水システムは、大きく分けて固定式と可搬式があります。固定式は、100~200リットル以上の水を確保できる大容量が特徴です。可搬式は10~20リットルのタンクが、ギャレーやトイレ、洗面台など設備ごとについています。いずれの方式も、給水タンクと同じ量以上貯められる排水タンクがセットになっており、自分で排水を決められた場所で排水しなければなりません。それぞれの方式の給排水システムを見ていきましょう。
大容量が魅力の固定式給水タンクと給排水システム
固定式給水タンクは、大型の輸入車で用いられている、キャンピングカーの床下などに給水タンクと排水タンクが設置してあるタイプです。ガソリンを給油するように給水口からタンクに給水し、ポンプで水を組み上げて使用します。排水は、ブラックタンク式とも呼ばれており、タンクに排水を溜めてホースを使用して車外に排出する方法です。
100~200リットル以上と確保できる水の量が多いことや、可搬式のように10~20kgの給排水タンクを持ち運ぶ必要がない点が、固定式給水タンクのメリットです。また、排水に触れることもありません。
取り扱いが簡単な可搬式給水タンクと給排水システム
可搬式給水タンクは、主に日本製のキャンピングカーで採用されており、10~20リットルの給水タンクを取り外して給水をおこない、ポンプで水を組み上げて使用します。使用した水はセットになっている排水タンクに溜められ、いっぱいになると取り外して排水します。トイレの場合は、汚水タンクやカセットを取り外して処理します。
固定式のようなホースのセットが不要であり、水道さえあればどこでも給水可能な点が可搬式給水タンクのメリットです。また、簡単に取り外せるため、容易に洗浄などのメンテナンスができます。
キャンピングカーの給排水のやり方や注意すべきポイントとは
給排水の仕組みを理解したところで、給排水のやり方や場所、注意事項をお話しします。出発あるいは帰着時に自宅で給排水をおこなうものの、日帰りならともかく、数日にわたって旅行する場合は、どこかで給排水をおこなわなければなりません。キャンピングカーのタンクの容量を考えずに出発すると、旅行の途中で水が使えなくなることもあります。このため、旅行が数日にわたる場合は給排水ポイントを行程に組み込みましょう。
給水のやり方や注意すべきポイント
自宅以外の給水場所は、キャンプ場・RVパークのほか、湧水や名水スポットのほか、ガソリンスタンドで水を分けてもらう方法があります。可搬式の場合は、給水タンクを持ち運び給水します。固定式の場合は、あらかじめ用意した給水ホースを使用して給水します。
固定式、可搬式いずれも以下の点に注意しましょう。
- 衛生管理上、飲用および調理用の水は、ペットボトルなどで別途用意しておきます。
- 外出先で給水する場合、水道水か井戸水か確認し、水質が不明な水の給水を控えます。
排水のやり方や注意すべきポイント
自宅以外で排水する場合は、キャンプ場やRVパークなどのダンプステーションで処理します。可搬式の場合は、排水タンクやトイレのカセットを持ち込み処理します。固定式の場合は、排水タンクとダンプステーションの設備を排水ホースでつないで流します。日本ではダンプステーションがあまり普及していないことから、事前に排水場所の確認が必要です。
固定式、可搬式いずれも以下の点に注意しましょう。
- 高速道路のサービスエリアや道の駅など、公共のトイレで排水を控えます。
- 可能なかぎり排水と同時に洗浄をおこない、雑菌の繁殖を抑えます。
給排水の仕組みや水の使い方を理解してキャンピングカーを満喫しよう
キャンピングカーで水を使用する場面は多いものの、給排水タンクの大きさが限られており、自宅のように思う存分水を使えません。そこで、給排水の仕組みを理解したうえで、利用目的や利用人数に見合う水回り設備や給排水タンクが整ったキャンピングカーを選びます。
また、日本では、キャンピングカーの文化が根付きはじめたばかりであり、給排水設備が十分に整っているとはいえません。水にまつわるトラブルを回避して旅行を満喫するために、給水や排水をおこなえる場所をあらかじめ調べて出発するとよいでしょう。