トヨタのハイエースはキャンピングカーのベース車両として定番のモデルとなっています。車内の広さや耐久性など元の商用車としてのメリットはもちろん、カスタマイズ性の高さなどベース車両に適した特徴を備えているのが魅力です。
本記事ではキャンピングカーのベース車両となるハイエースの種類や特徴について詳しく解説しています。ベース車両の知識を身に着ければ、ビルダーが販売するキャンピングカーを選ぶだけでなく自身でカスタムをする際にも役立つはずです。
ハイエースはバンコンのベース車両では定番モデル
トヨタのハイエースはキャンピングカーのベース車両の定番モデルとなっています。特に日本国内で人気の高いバンコン(バンコンバージョン)は、ハイエースをベースとしたモデルが多いのが特徴です。
ワンボックス車やミニバン、ワゴンをベースとするバンコン(バンコンバージョン)は、ハイエース以外にもさまざまなベース車両が用いられます。しかし、選択肢が増えた昨今であってもハイエースはベース車両として不動の地位を確立しているのです。
広い室内空間とカスタム性の高さが人気の理由
ハイエースをベース車両として用いる際のメリットには下記のようなものがあります。
- エンジンや駆動方式、カスタムパーツが豊富
- 居住スペースが広く、シートアレンジなどの改造が容易
ハイエースは同車種であってもエンジンや駆動方式はもちろん、カスタムパーツが豊富に用意されています。多くの選択肢からお気に入りのアイテムを選べるので、オリジナルのキャンピングーを作りやすいのがメリットです。また、居住スペースが広くシートアレンジも容易におこなえるなど扱いやすいのも特徴です。車本来の走行性能・安全性能も高く、実用的なメリットが多いことがベース車両にハイエースが選ばれる理由だといえます。
乗り心地や防音性など他モデルと比較して欠点もある
ベース車両にハイエースを選ぶ場合、下記のようなデメリットが発生します。
- 乗り心地に難がある
- 燃費がよくない
- 防音性・断熱性が低い
本来ハイエースは荷物を運搬することを目的とした商用車です。ミニバンなどと比較すると足回りは固く、路面の状況によっては揺れを感じやすいといえます。また、燃費は2WD・ディーゼル車でリッター平均11.7キロメートル~12.5キロメートルと決してよいとはいえません。ガソリン車・4WDではさらに数値が低くなりますし、積載物の重量が増えればさらに燃費は悪くなります。また、防音性・断熱性もそれほど高くはないため、ベース車両として利用するなら手間をかける必要があるでしょう。
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5代目となるH200系のハイエースは大きく分けて4種類
日本国内の現行ハイエースは2004年に発売された5代目H200系で、定期的に改良やマイナーチェンジがおこなわれています。高さや長さ、幅などはもちろん、各種仕様を含めると種類が多く見えますが、実際にラインナップされているボディタイプは大きく分けて4種類です。ベース車両として利用されることの多い、ハイエースバンタイプの特徴を確認してみましょう。
ボディ高さ | ボディ長 | ボディ幅 | グレード |
標準ルーフ | ロング | 標準(ナローボディ) | S-GL(4ナンバー) DX・DX”GLパッケージ” (4ナンバー)※ボディ仕様は同じだが内装・外装などで違いがある |
ハイルーフ | DX・DX”GLパッケージ”(1ナンバー) | ||
ミドルルーフ | ワイド | S-GL(1ナンバー) | |
ハイルーフ | スーパーロング | ワイド | DX・DX”GLパッケージ” (1ナンバー) |
標準ボディ(ナローボディ)+ロングなら日常生活でも利用しやすい
標準ボディ(ナローボディ)+ロングは横幅1,695ミリメートル、長さ4,695ミリメートルとなっています。トヨタのノアなどのミニバンとほぼ同じサイズで、最小回転半径は2WDで5.0メートル・4WDで5.2メートルとなっており日常生活でも利用しやすいモデルだといえるでしょう。また、ボディの高さは下記のように大きく2つの種類が存在します。
- 標準ルーフ:1,980ミリメートル
- ハイルーフ:2,240ミリメートル、2,245ミリメートル(5ドアのジャストロー)
ハイルーフタイプはフロア形状がジャストロータイプで若干高くなりますが、標準タイプと大きな違いはありません。ただしハイルーフでは地下駐車場など高さ制限のある場所には入ることができない可能性があります。
ワイドボディ+ロングは普段使いからキャンプまで幅広く使える
ワイドボディ+ロングは横幅1,880ミリメートル、長さ4,840ミリメートルとなります。同じロングの名称を冠してはいるものの、標準ボディより車体が長いという特徴があります。トヨタのアルファードやヴェルファイアと同じようなサイズ感で、最小回転半径は2WDで5.2メートル・4WDで5.4メートルです。標準ボディと同じく、普段使いからキャンプまで幅広く利用できます。
- ミドルルーフ:2,105ミリメートル
ボディの高さは上記のようにミドルルーフ1種類のみとなります。ハイルーフより車高は低くなりますが、駐車場などによっては高さ制限の確認が必要となるかもしれません。なおハイエースのバンタイプでは、標準ルーフが4ナンバー、ミドルルーフ・ハイルーフでは1ナンバーとなります。
ワイド+スーパーロングはベース車両としてポピュラーなモデル
ワイド+スーパーロングは横幅1,880ミリメートル、長さは5,380ミリメートルとなります。横幅こそワイドボディ+ロングと同じですが、長さも含めてハイエース最大のサイズとなっています。
- ハイルーフ:2,285ミリメートル
高さは上記のようにハイルーフ1種類のみで、最小回転半径は2WDで6.1メートル・4WDで6.3メートルとなります。一般車と同じようには駐車することも難しく、普段使いには適さないといえるでしょう。一方、スーパーロングはキャンピングカーのベース車両として人気が高く、ビルダー向けのキャンパー特装モデルも存在します。
ハイエースはボディタイプ以外にも仕様の違いが多い
日本国内のハイエースは現行モデルである5代目となるまでさまざまな仕様変更が施されてきました。現行の5代目だけでも、発売から2023年に至るまでに10回以上のマイナーチェンジが繰り返されているのです。販売時期によって燃費性能も異なるため、特に中古のキャンピングカーを購入する場合は確認が必要となるでしょう。
ただし、現行のモデルであればボディタイプを中心として選ぶことでベース車両選びの時間を減らすことができます。また、ボディタイプ以外では車両タイプ・エンジン・駆動形式の3つで大きな違いがあります。
バンタイプとワゴンタイプは用途が異なる別物の車両
ハイエースには商用用途のバンタイプの他に、人を乗せることを目的としたワゴンタイプも存在します。ワゴンタイプは足回りが柔らかく設計されており、送迎用途などで法人ユーザーを中心に人気を集めています。一般的にはワゴンタイプの方がキャンピングカーのベース車両には向いているように思えます。しかし、ハイエースをベースとして販売されているキャンピングカーはバンタイプが主流となっています。
バンタイプはボディタイプが複数存在するため、用途に合わせてベース車両を選べるというメリットが存在します。また、ワゴンタイプと比較すると座席の数も少なく、シート取り外しの手間を減らすことが可能です。ベース車両としての利用が前提なら、バンタイプを選ぶのがおすすめだといえます。
ガソリンとディーゼルは初期費用と燃費で違いがある
ハイエースのバンタイプにはガソリン車とディーゼル車の2種類があります。ガソリン車はエンジン音が静かで、初期費用を抑えられるというメリットがあります。たとえばトヨタの公式ホームページに掲載されている2WDのハイエースの価格は下記の通りです。
- DX・GLパッケージ(2WD・2000ガソリン・6A/T・5ドア):2,606,600円(税込)
- DX (2000ガソリン・6A/T・標準ルーフ):2,558,600円(税込)
- DX (2WD・2000ガソリン・6A/T):2,392,100円(税込)
- スーパーGL (2WD・2800ディーゼル・標準ボディ・標準ルーフ):3,755,500円(税込)
- DX (2WD・2800ディーゼル・2/5人乗り):3,227,200円(税込)
グレードにもよりますが、ディーゼル車と比較して最大100万円以上の差があることがわかります。一方ディーゼル車は燃費がよく、キャンピングカーに適したトルクと高い耐久性を備えています。キャンピングカーを長期間利用する場合は、ディーゼル車を選んでも十分に採算が採れるのではないでしょうか。
一般道中心なら2WD・走行性重視なら4WDが安心
ハイエースのバンタイプには2WDと4WDの2タイプがあります。後輪のみを駆動させる2WDは比較的燃費がよく、4WDよりも価格が安いのが特徴です。市街地を中心に、整備されたキャンプ場の利用が前提なら2WDでも問題はないかもしれません。
一方、4つのタイヤすべてを駆動させる4WDは悪路など起伏の激しい場所で力を発揮します。整備されていないキャンプ場はもちろん、雪道や凍結路で走ることを前提とするなら4WDを選ぶのがおすすめです。また、4WDは直進安定性にも優れているため、高速道路の走行も2WDより有利となります。
ベース車両の理解を深めればキャンピングカーの選択肢が広がる
日本国内のキャンピングカーには複数の種類がありますが、その中にあってバンコンは特に高い人気を誇ります。バンコンのベースとして用いられることの多いハイエースは、広い居住空間やカスタム性の高さなどキャンピングカーに適した特徴を持っている車両です。
商用車のバンタイプや乗用目的のワゴンタイプなど種類は豊富ですが、基本的なボディタイプはそれほど多くはありません。ベース車両の理解を深めれば、キャンピングカーを購入する際の選択肢を増やすことができるはずです。