一般社団法人日本RV協会が発行するキャンピングカー白書2023によれば、2022年度の国内の新車・中古車を含めたキャンピングカー販売売上合計額は過去最高の762億円(対前年比120%)となっています。アウトドアブーム・災害時の活用などへの注目からキャンピングカーの人気は年々高まっているようです。特に、日常生活にも活用しやすいバンコンは日本国内で販売されるキャンピングカーの中でも高い人気を誇っています。
バンコンのベース車両としてはハイエースが定番ですが、同じくトヨタが手掛けるタウンエースもビルダー・ユーザーから支持を集めています。バンライフブームで注目を集めるタウンエースのメリットやハイエースとの違いをご紹介します。
タウンエースはトヨタ自動車が手掛ける商用車
タウンエースは日本最大手の自動車メーカー、トヨタ自動車が販売する商用車です。1976年(昭和56年)から生産・販売が開始されて以降、幾度ものマイナーチェンジ・改良が重ねられ現在に至っています。
ボディタイプはミニバンやトラックなど複数ありますが、メインのワンボックス商用車も含めてキャンピングカーのベース車両としての需要が高いのが特徴です。近年は若年層を中心としたバンライフブームの影響もあり、タウンエースをベースとしたキャンピングカーの人気が高まっています。
2008年デビューの現行型はベース車両として人気が高い
1976年に販売が開始されたタウンエースは2023年に至るまで複数回のモデルチェンジがおこなわれています。
- 初代(R10系):1976年~1982年
- 2代目(R20系/30系):1982年~1999年
- 3代目(R40系/50系):1996年~2008年
- 4代目(S40#/41#系):2008年~
販売期間中のマイナーチェンジを含めると、初代から仕様変更された箇所は多岐にわたります。ワンボックスタイプのタウンエースは主にバンコンのベース車両として利用されますが、トラックタイプはキャブコンとしての需要が高いのも特徴です。なおダイハツのグランマックスとマツダのボンゴは生産拠点を同じくする姉妹車であり、いずれもキャンピングカーのベース車両として利用されています。
2020年のマイナーチェンジとバンライフブームで再注目
近年は海外メーカーをベース車両とした輸入車も販売されており、日産が手掛けるNV200バネットやマツダのボンゴなどビルダーによってはタウンエース以上に支持を集めている車両もあります。しかし、2020年にマイナーチェンジがおこなわれたタウンエースは燃費・トルクが向上しベース車両としての人気が再燃しています。
また、近年のバンライフブームもタウンエースの人気再燃に一役買っているといえるでしょう。車を移動できる生活拠点として捉え、全国を旅しながら暮らすバンライフスタイルに憧れる人は増加傾向にあるようです。商用車をベースとしたタウンエースは他の車両にはない独特の雰囲気を持っており、バンライフにマッチしたキャンピングカーが多いのも魅力だといえます。
タウンエースとハイエースはさまざまな違いがある
トヨタが手掛ける商用車としては、ハイエースもキャンピングカーのベース車両として人気を集めています。ハイエースは日本国内でシェア率の高いバンコンのベース車両として定番ですが、専用のシェルを架装したキャブコンなどビルダーによって幅広い用途で利用されています。
同じメーカーの商用車であるためデザインも似ているハイエースとタウンエースは、キャンピングカーのベース車両として比較されることが多いのも特徴です。バンコンのベース車両として同じく人気の高い日産のNV200バネットも含めて、各車両の違いを確認してみましょう。
タウンエースはハイエースと比較してコンパクト
タウンエースとハイエースを比較した際、特に顕著なのは車両がコンパクトであることです。車高を除けばタウンエースのサイズはトヨタが手掛けるアクアなど一般的な乗用車とほぼ同じサイズとなっています。ハイエースでは駐車場を探すのに苦労してしまうこともありますが、乗用車とほぼ同じサイズのタウンエースであれば日常的に安心して利用できるでしょう。
なおNV200バネットと比較するとタウンエースは全長が短く、全高が高いという特徴があります。取り回しを優先しつつ、広いスペースを確保できるのもタウンエースの魅力ではないでしょうか。
車両名(いずれも最小サイズのグレード) | 全長 (ミリメートル) |
全幅 (ミリメートル) |
全高 (ミリメートル) |
タウンエース(バン) | 4,065 | 1,665 | 1,930 |
ハイエース(標準ボディ) | 4,695 | 1,695 | 1,980 |
NV200バネット(ワゴン) | 4,400 | 1,695 | 1,850 |
アクア(2022年) | 4,050 | 1,695 | 1485 |
ハイエースと比較して手に取りやすい価格も魅力
ベース車両で比較した際、タウンエースはハイエースよりも価格が安いという特徴もあります。ベース車両のグレードの選択はビルダーによっても異なりますが、最低価格だけでも約500,000円(税込)ほどの違いがあることがわかります。
実際にキャンピングカーとして仕上げられた際の価格はタウンエースベースが200万円前後からとなるのに対し、ハイエースベースでは300万円台後半からが目安となります。タウンエースはバンライフを始めるために手頃なキャンピングカーを探している若年層にも受け入れやすいのではないでしょうか。
車両名 | 最低価格(税込) | 最高価格(税込) |
タウンエース(バン) | 1,819,000円 DX(2WD・5/MT) |
2,347,000円 GL(4WD・4/LT) |
ハイエース(標準ボディ) | 2,392,100円 DX(2WD・2000ガソリン・ 6/AT) |
3,491,200円 DX(4WD・6/AT) |
タウンエースをキャンピングカーのベース車両にする3つのメリット
キャンピングカーの中でも特に人気を集めるバンコンは、普段使いのしやすさが大きなメリットとなっています。基本的には内装を中心として手を加えられるので、通勤や買い物などにも利用しやすいのが魅力です。タウンエースをベースとしたキャンピングカーはこのような特徴に加え、車体サイズや維持費などにもメリットがあります。
軽キャンパーより大きく、ハイエースより小さいタウンエースはキャンピングカーとしては中途半端な位置にあるともいえます。しかし、近年はビルダーのアイディアを活かしたタウンエースベースのキャンピングカーも多く生み出されており、より選択肢が広がっているのも魅力です。
運転しやすいコンパクトサイズで普段使いにも適している
タウンエースは普通乗用車とほぼ同じサイズであるため普段使いにも適しているのがメリットの1つです。通常の駐車場はもちろん、一般的に2メートル~となる高さ制限のある立体駐車場やセルフ洗車機でも気にせず利用することができます。一見するとキャンピングカーに見えない外装の車両も多いため、買い物や家族の送迎などでも悪目立ちすることは少ないはずです。さらに全長が短く、最小回転半径も小さいため取り回しに優れているのも特徴です。
- タウンエース(2WD):最小回転半径4.9メートル
- タウンエース(4WD):最小回転半径5.3メートル
日本国内では街中や私道など幅の狭い道路も多くありますが、タウンエースであれば初心者や女性でも安心して運転することができるのではないでしょうか。
5ナンバーサイズながらキャンピングカーとしての装備は充実
タウンエースをベースとしたバンコンのキャンピングカーは、小型乗用車と同じ5ナンバーサイズです。車内空間の広さという点ではハイエースなど大型のバンコンに劣りますし、キャブコンと比較して断熱性に欠けるのもデメリットです。ただし、室内空間は大人2人程度が余裕を持って就寝できるスペースが確保でき、サブバッテリーを搭載すれば家電製品も利用することができます。
タウンエーストラックをベース車両としたキャブコンも販売されていますし、8ナンバー登録の要件を満たせばバンコンであっても水道・炊事設備を搭載することが可能です。テントなどのキャンプ用品を併用するなど、アイディア次第で快適なバンライフを実現することができます。
小型乗用車よりお得な維持費で運用が可能
タウンエースをベースとしたキャンピングカーは、小型貨物車である4ナンバーか要件を満たした8ナンバー登録が基本となります。4ナンバーは他の小型乗用車クラスの5ナンバーより自動車税や重量税が安いという特徴があります。車検期間が短いというデメリットはありますが、業者の選択次第では維持費を安くすることができるでしょう。
また、2020年のマイナーチェンジ後は燃費性能も改善されており、より使いやすくなっているのも魅力です。一般的な小型乗用車と比較するとタウンエースの燃費性能は決して高いとはいえませんが、キャンピングカーとして見れば経済的であることがわかります。
車両・ナンバー | 小型貨物車(4) ※自家用 |
小型乗用車(5) ※総排気量1000cc超~1,500cc以下 |
特殊車両(8) ※小型貨物車 |
自動車税(1年) ※新規登録時 |
5,000円 | 30,500円 | 27,600円 |
重量税(1年間) ※エコカー減税適用前 |
6,600円 | 12,300円 ※1.5トン以下 ※3年自家用 |
8,200円 ※1.5トン以下 |
自賠責保険 ※2023年4月1日以降 |
24か月:20,340円 12か月:12,850円 |
24か月:17,650円 12か月:11,500円 |
24か月:19,980円 12か月:12,670円 |
車検 | 新規登録から初回が2年、以降1年ごと | 新規登録から初回が3年、以降2年ごと | 新規登録から2年ごと |
タウンエースベースのキャンピングカーを選ぶ際の注意点
タウンエースは軽自動車などをベースとした軽キャンパーよりも車内空間が広いのが魅力です。生活に必要な装備を積んでもスペースに余裕があるため、バンライフへの活用もしやすいといえます。
ただし、ハイエースなどと比較すれば車内スペースは決して広いとはいえず、快適なバンライフを実現するためには工夫が必要となるでしょう。また、タウンエースをベース車両として選ぶ際はバンコンとキャブコン、ナンバー登録の違いについても理解しておく必要があります。
スペースは狭く本格的なキャンプ用途には向いていない
キャンプ用途として使いやすいタウンエースですが、ハイエースなどと比較すると車内スペースが狭いのがデメリットです。例えば車内を立って移動することは難しいですし、車内での就寝も2人~3人が限度となるでしょう。また、ベース車両のボディをそのまま利用するバンコンでは断熱性能が足りず、外気の影響を受けやすいのも特徴です。車内に暖房設備などを整えても、気温によっては快適に過ごすのが難しくなるはずです。
テントやシュラフを持ち込めば複数人でも同時に利用できますが、長期旅行などの本格的なキャンプ用途としては少し頼りないといえます。タウンエースでバンライフや長期旅行を目的とする場合は、車内設備や宿泊場所にも気を配っておきましょう。
税金や維持費は8ナンバー登録と大きく変わらない
8ナンバーのタウンエースは4ナンバー時と比較して初回以降の車検の期間が1年から2年に延びるというメリットがあります。8ナンバー登録が一般的となるキャブコンでは断熱性も優れており、バンコンでは炊事設備が追加されているなどよりキャンプ向きとなっているのも魅力です。2022年4月1日にはキャンピングカーの構造要件が緩和されたため、8ナンバーの取得は容易になったといえるでしょう。
ただし、8ナンバーにすると自動車税や重量税が上がりますし、必ずしもお得になるわけではありません。設備の増加に比例して初期投資額も大きくなるため、車両タイプやナンバーはキャンピングカーの使い方に合わせて選ぶのがおすすめです。
キャンピングカーをタウンエースベースにすると普段使いと車中泊を両立できる
軽キャンパーとハイエースの中間サイズのタウンエースは、バンコン・キャブコンのベース車両として長く支持されてきました。5ナンバーサイズとしては他にも人気の高いベース車両がありますが、車内スペースや取り回しのよさ、独特のデザインを持つタウンエースは再び注目されつつあります。
キャブコンはもちろん、バンコンのタウンエースも近年のバンライフブームにふさわしいキャンピングカーとなっています。普段使いと車中泊を両立したいと考えているなら、タウンエースベースのキャンピングカーを検討してみてはいかがでしょう。