近年、NPO法人や企業を通して提供されたキャンピングカーが災害の現場で有効活用されているのをご存じでしょうか。日本は地震や豪雨など自然災害の発生しやすい国ですが、そうした現場でキャンピングカーは物資の運搬から簡易宿泊所、災害対策の拠点などとして活躍しているのです。
また、用途の多様化にともなって個人のキャンピングカーに対する意識も変わりつつあるようです。本記事ではキャンピングカーの災害対策の実例をはじめ、個人での避難生活や防災への活かし方をご紹介します。
キャンピングカーは災害・防災対策に有効活用されている
近年はキャンピングカーを災害や防災対策に有効活用しようとする取り組みが広がっています。キャンピングカーの本来の用途は旅行やキャンプなどレジャー向けのイメージが強いものでした。しかし、2010年代から始まったとされるキャンピングカーブームからコロナ渦にかけてその用途は多様化しています。
一般社団法人日本RV協会を中心に、災害発生時にキャンピングカーを提供するNPO法人や企業も増加傾向にあります。また、個人であっても災害時にキャンピングカーを「防災グッズ」として利用したいと考える方は多いようです。
災害時はNPOや企業から提供されたキャンピングカーが活躍
一般社団法人日本RV協会では、震災などの災害が発生した際に会員企業のキャンピングカーを支援活動に利用しています。例えば2011年3月の東日本大震災や2016年4月の熊本地震の際は、NPO法人を通して提供されたキャンピングカーが支援スタッフの宿泊や休憩、被災者の一時宿泊施設として活用されました。また、震災から一定期間経過後も仮設住宅としてキャンピングカーの無償貸与が実施されています。
近年は災害発生時のキャンピングカーの有用性が注目されており、国や自治体と災害協定を締結するビルダーも増加しています。快適に過ごせる車内や就寝スペースなどが備えられたキャンピングカーは、宿泊所や避難シェルター、災害指令・医療介護などで活躍しているのです。
キャンピングカーユーザーの災害・防災対策の意識も高まっている
一般社団法人日本RV協会が2019年~2020年にかけて実施したアンケートの中で「キャンピングカーは災害時に活躍すると思いますか」との質問では、約98%の方が「はい」と回答しています。また、同アンケートではおよそ8割の方が防災のためにキャンピングカーを購入しようと考えていると回答していました。
アンケート内容 | 結果 | 投票数 |
キャンピングカーは災害時に活躍すると思いますか | はい97,5% いいえ:0.5% わからない:2.0% |
1298票 |
防災のためにキャンピングカーを購入したいと考えたことがありますか | はい77.3% いいえ:22.7% |
本アンケートの結果が反映されるように、近年では災害・防災をコンセプトとした個人向けのキャンピングカーも多数登場しています。キャンピングカーユーザーの災害・防災対策の意識は年々高まっているといえるのではないでしょうか。
災害時にキャンピングカーを利用する主要なメリットとは
先ほどご紹介した一般社団法人日本RV協会のアンケートでは、「キャンピングカーがあれば災害時に確保できると感じるものは何ですか(投票数3,249票)」という質問もありました。
- 場所:34.9%
- 電源:27.9%
- 水:14.8%
- バスルーム(トイレ含む):10.9%
- 情報:9.2%
- その他2.4%
1位は場所となっており、キャンピングカーに求められる機能の中でもプライベートな空間が重要視されていることがわかります。次いで電源、水など生活をしていく上で必要不可欠なものが上位となっていました。いずれも避難所を利用すれば確保できるものですが、個人で利用するキャンピングカーだからこそのメリットもあります。
プライベートな空間が確保されており精神的な負担も軽減
キャンピングカーの主要なモデルであるキャブコンやバンコンをはじめ、その多くは快適な車中泊ができることを前提に作られています。フルフラットシートを利用して数人が就寝できるスペースを確保できますし、一定の防音性があることから騒音に悩まされる心配も少ないでしょう。また、目隠し用途としてカーテンなどを利用すれば手軽にプライバシーを確保できます。
人の多く集まる避難所ではプライバシーの確保が難しいというデメリットがあります。パーテーションなどが用意されていることはありますが、ちょっとした生活音がストレスとなってしまうこともあるでしょう。プライベートな空間が確保されたキャンピングカーなら、精神的な負担を軽減するという意味でも有用です。
身体的問題やペット連れなどで避難所を使いにくい場合でも安心
身体的な問題で避難所の利用が難しい場合でもキャンピングカーは活躍します。例えば身体を動かしづらい方がいる場合は、支援の準備が整うまでキャンピングカーを一時的な待機所とすることもできるでしょう。就寝スペースの広いキャンピングカーなら足を伸ばせるため、エコノミークラス症候群の対策にも繋がります。
また、避難所によってはペット連れで利用できないこともありますし、鳴き声や臭いなどでトラブルになってしまう可能性もあるでしょう。避難所によってはペット専用スペースを開放していることもありますが、野外に設置される可能性があるなど環境がよいとは限りません。プライベートな空間が確保されたキャンピングカーであれば、ペット連れでも安心して避難生活を送れるのではないでしょうか。
設備を整えれば電気・ガス・水道も利用できテレワークも可能
キャンピングカーは走行用とは別にサブバッテリーを積んでおくことで電化製品を利用することができます。情報をえるために重要なスマートフォンの電源も確保できますし、Wi-Fiなどの通信環境を整えておけばテレワークも可能です。ガスや水道など、設備を整えておけばキャンピングカーのみで数日間過ごすことも可能でしょう。
実際に災害が起きると救助活動が開始されるまで間がありますし、ライフラインの復旧には時間がかるものです。電気・ガス・水道とともに、災害発生から救助体制が整うまでに必要とされる最低72時間(3日分)の食糧の備蓄をおこなっておけば災害時でも安心して対処できるのではないでしょうか。
災害・防災対策としてキャンピングカーを活用する際の確認ポイント
軽キャンパーなど小型のキャンピングカーであっても、車中泊できる程度のスペースが確保されていれば災害時には有効活用できるでしょう。ただし、利用する人数や車中泊の快適性を考慮すると、災害・防災対策に適したキャンピングカーがあることがわかります。
また、災害・防災対策を意識するならキャンピングカーの装備と合わせてキャンプ道具などを確認しておくことも重要です。災害・防災対策といえども、普段のキャンプやレジャーの延長線だと考えれば確認するポイントも難しくありません。
災害対策を意識するなら基本装備+αで車種を選ぶ
日本国内で販売されているキャンピングカーにはさまざまな種類がありますが、災害対策を意識するなら乗車定員4人~8人程度のキャブコンや乗車定員3人~6人程度のバンコンがおすすめとなります。キャブコンや一部のバンコンでは基本的に調理の熱源と水は整えられていますが、下記のようにオプションとして用意されている車内装備も多くあります。
- 冷蔵庫:食材、薬品の保存等に役立つ
- ベンチレーター:車内にこもった空気の排気や吸気も可能
- FFヒーター:サブバッテリーがあればエンジン停止時でも使用可能
- 家庭用エアコン:ペット連れ、夏の暑さ対策に有効
- トイレ:プライベートで安心して利用可能
- 外部収納庫:非常時のゴミ置き場など、活用の幅は広い
防災を意識しつつ車種を選び、必要なオプションを選択してみましょう。
キャンプ道具やアイテムは防災を意識して揃える
本格的なキャンピングカーでなくても、キャンプ道具を揃えておくことで災害・防災対策として役立てることができます。
- 調理:カセットコンロ、ポータブル冷蔵庫
- 明かりの確保:ソーラーランタン
- 衛生用品:携帯トイレ、ウェットシート
- 情報収集:手回しラジオ・ワンセグテレビ
- 熱さ:寒さ対策:ストーブ・湯たんぽ
例えばカセットコンロやソーラーランタンは普段のキャンプでも利用できますし、サブバッテリーを搭載するのが難しいキャンピングカーでも利用できるでしょう。普段のキャンプで使うことを想定してアイテムを揃えれば、培ったスキルをそのまま災害時にも役立てられるはずです。
キャンピングカーを最大限活用するために日頃から準備する
万が一災害が発生した際、必ずしもキャンピングカーが利用できるとは限りません。災害によってキャンピングカーに問題が起きる可能性もありますし、避難所までの車両移動が制限されることもあるでしょう。日頃からキャンピングカーの点検やメンテナンスをおこない、自治体の避難ルールも確認しておくのがおすすめです。
また、食料の備蓄やペットの防災は普段から準備しておきましょう。例えば非常食は定期的に飲食しその都度補充するローリングストック法を利用すれば、賞味期限切れを防ぎつつ味にも慣れるというメリットがあります。ペットとの避難はしつけがされていることが前提となるので、定期的に乗車させキャンピングカーに慣れさせておきましょう。
キャンピングカーはレジャーだけでなく災害・防災対策にも活用できる
キャブコンやバンコンを中心に、車中泊を目的としたキャンピングカーはレジャーだけでなく災害・防災対策に有効活用できます。企業や自治体と比較すると、個人で災害・防災対策にキャンピングカーを購入するのは簡単ではありません。購入後の維持費も必要となりますし、普通乗用車より点検やメンテナンスの手間もかかるでしょう。
しかし、普段からレジャー用途が前提であればキャンピングカーを災害対策に活用するのも無駄にならないはずです。キャンピングカーを災害・防災対策として導入しようと考えているなら、普段の利用頻度も合わせて確認しておきましょう。