車中泊を目的としたキャンピングカーにはメインバッテリーとは別に冷蔵庫や照明、テレビやエアコンなどを動かすサブバッテリーが搭載されます。サブバッテリーは一般的に充放電に強い鉛ディープサイクルバッテリーが選ばれますが、近年は軽量かつハイパワーのリチウムイオンバッテリーも浸透してきています。
キャンピングカーの使い方、搭載する家電製品によってはリチウムイオンバッテリーを使用することで車中泊がより快適になるかもしれません。鉛ディープサイクルバッテリーとの比較を交えつつ、リチウムイオンバッテリーのメリットや注意点を確認してみましょう。
キャンピングカーのリチウムイオンバッテリーの需要は高まっている
キャンピングカーのニーズは年々多様化しており、近年はより快適な車中泊ができるように消費電力の大きい家電製品を搭載するモデルも増加しています。例えば調理のための電子レンジや冷蔵庫、熱中症のリスクを避けられる家庭用エアコンなどを搭載したモデルが人気を集めています。
これらの消費電力の大きい家電製品のニーズが高まるにつれて、性能・機能面で優れるリチウムイオンバッテリーがキャンピングカーのサブバッテリーに選択されることが増えてきました。
消費電力の大きい家電製品のニーズの高まりとともに注目
キャンピングカーに搭載される家電製品の中で、特に電力の消費が大きいのは家庭用エアコンや電子レンジです。また、冷蔵庫やテレビの使用、スマートフォンなどの各種電子機器の充電で安定した電気が求められるシチュエーションも増えています。このようなニーズの高まりに合わせて、鉛ディープサイクルバッテリーよりも性能・機能面で優れるリチウムイオンバッテリーが注目されるようになりました。
リチウムイオンバッテリーの充放電性能は鉛ディープサイクルバッテリーより優れており、安定した電力供給が可能です。また、充電回数を減らせることから長期旅行やリモートワーク、災害時など幅広いシチュエーションで活用できるでしょう。
従来のサブバッテリー同様に外部電源や走行充電にも対応
キャンピングカー用のリチウムイオンバッテリーはまだ登場して間もないものの専門に取り扱うメーカーも登場しています。従来のサブバッテリー同様に外部電源からの充電も可能ですし、走行充電やソーラーパネルにも対応しています。
バンコンやキャブコン向けの大容量モデルはもちろん、軽キャンピングカー向けの小型モデルなど選択肢が豊富にあるのも魅力です。ビルダーが販売するキャンピングカーの中には、初めから複数の家電製品を使用することを想定してリチウムイオンバッテリーを搭載したモデルも増えています。
リチウムイオンバッテリーのメリット│鉛ディープサイクルバッテリーとの違い
リチウムイオンバッテリーは従来の鉛ディープサイクルバッテリーと比較して、充放電効率など性能面だけで優れているわけではありません。軽量かつ寿命が長いなど機能面でメリットが多いのも魅力です。
初期費用は高くなりますが、キャンピングカーや家電製品の使い方によっては車中泊がより快適になるはずです。鉛ディープサイクルバッテリーとの違いをポイントに、リチウムイオンバッテリーのメリットを確認してみましょう。
軽量かつコンパクトでキャンピングカーの車内スペースに余裕ができる
リチウムイオンバッテリーの重量は鉛ディープサイクルバッテリーと比較しておよそ半分となります。サイズも比較的コンパクトで、複数のサブバッテリーが必要な場合でも車内スペースを圧迫せずに済みます。メーカーによってはさらにコンパクトなモデルもあるため、車内スペースが限られる軽キャンピングカーなどへの搭載も容易です。
(参考例) Ah=20HR容量 |
リチウムイオンバッテリー(R社/12.8V100Ah) | 鉛ディープサイクルバッテリー(A社/12V105Ah) |
重量(キログラム) | 11.8 | 24.3 |
長さ(ミリメートル) | 289 | 322 |
横幅(ミリメートル) | 172 | 174 |
総高さ(ミリメートル) | 187.5 | 231 |
大容量かつ充電効率がよく消費電力の高い家電製品も安心して使える
鉛ディープサイクルバッテリーは長時間の使用や大放電で電圧が落ちるため実際の蓄電量より使える電気が少ないという特徴があります。一方、リチウムイオンバッテリーは長時間の使用でも電圧変化が少なく、大放電にも強いため安定した電力供給が可能です。
また、急速充電ができるリチウムイオンバッテリーは使った分の電力を短時間で充電できます。消費電力の高いエアコンや電子レンジの使用はもちろん、複数の家電製品を組み合わせても安心して使用できるでしょう。
(参考例) Ah=20HR容量 |
リチウムイオンバッテリー(R社/12.8V100Ah) | 鉛ディープサイクルバッテリー(A社/12V105Ah) |
公称容量(Wh) | 1280 | 約700 |
寿命が長く長期的な視点ではコストパフォーマンスに優れている
リチウムイオンバッテリーは、鉛ディープサイクルバッテリーと比較して充放電回数が多く寿命が長いという特徴があります。現在販売されているリチウムイオンバッテリーの性能は高く、100Ahクラスでは4000回、50Ahクラスでも2000回の充放電が可能としています。
充電時の放電電量や充電電圧によってサイクル寿命に差は出てきますが、鉛ディープサイクルバッテリーの4倍以上長持ちさせることができます。リチウムイオンバッテリーは鉛ディープサイクルバッテリーより高額ですが、長期的な視点ではコストパフォーマンスに優れているといえるでしょう。
(参考例) Ah=20HR容量 |
リチウムイオンバッテリー(R社/12.8V100Ah) | 鉛ディープサイクルバッテリー(A社/12V105Ah) |
サイクル寿命 | 4000 | 約200~500 |
メンテナンスの手間も少なく環境負荷を減らすことにも繋がる
鉛ディープサイクルバッテリーはモデルによって電解液の補充やガスの発生などメンテナンスが必要となります。一方のリチウムイオンバッテリーはこのような手間がかからず、手軽に扱えるのが特徴です。また、1台の寿命が長いことは結果的に環境負荷を減らすことにも繋がります。
鉛ディープサイクルバッテリーは鉛や硫酸などの重金属を含んでおり、廃棄時に汚染の原因となることもありますが、リチウムイオンバッテリーであればその心配も少ないといえます。限りある資源を有効に使う循環型社会が浸透しつつある中、今後はサブバッテリーもリチウムイオンバッテリーが主流になると考えられています。
リチウムイオンバッテリーは導入しやすいが注意点もある
リチウムイオンバッテリーは、鉛ディープサイクルバッテリーと同じようにECサイトやメーカーの代理店で購入することが可能です。サブバッテリーについての知識がある方なら、交換やメンテナンスをすることも可能でしょう。
しかし、購入先やメーカーよっては品質に差がある可能性もありますし、接触不良や火災などのトラブルが発生しないとも限りません。この点は鉛ディープサイクルバッテリーも同じですが、性能を最大限発揮するためにも十分な知識と技術が必要となります。
キャンピングカー販売店での購入やビルダーでの後付け・交換もできる
需要の高まりとともに、リチウムイオンバッテリーを取り扱うキャンピングカー販売店やビルダーも増加しています。キャンピングカー販売店やビルダーであれば専門的な知識を用いて希望に沿った容量・用途のリチウムイオンバッテリーの提案も可能です。
キャンピングカー用のリチウムイオンバッテリーは12V100Ahで10万円以上と高価で、施工を含めると初期費用はかさんでしまいます。しかし、鉛ディープサイクルバッテリーと比較して周辺機器や交換方法は複雑ですし、DIYでの取り付けでは性能を引き出せないばかりかリチウムイオンバッテリーの寿命を縮めてしまう可能性もあります。
安全に運用するなら販売店やビルダーへの事前相談は不可欠
キャンピングカー用のリチウムイオンバッテリーは安全性を高めて作られています。国内メーカーが製造・販売を手掛けたものや、キャンピングカー販売店やビルダーが取り扱うリチウムイオンバッテリーなら安心して使えるでしょう。
しかし、購入先によっては品質が安定しない可能性もありますし、適当に取り付ければ火災などのトラブルが発生する確率も高くなるはずです。また、取り付け時の排熱や使用後の廃棄・回収も考慮しなくてはなりませんし、リン酸鉄系・三元系など種類にも違いがあります。リチウムイオンバッテリーを安全に運用するためにも、後付け・交換などはキャンピングカー販売店やビルダーに相談するのがおすすめです。
リチウムイオンバッテリーはメリットが多い│用途やコストも含めて導入を検討
リチウムイオンバッテリーは軽量かつコンパクトで充放電効率に優れるなど多くのメリットがあります。鉛ディープサイクルバッテリーと比較すると高価ですが、その特性からエアコンや電子レンジなど大容量の家電製品との相性がよいといえるでしょう。
キャンピングカーの使い方によっては、車中泊をさらに快適にすることができるはずです。初期費用は必要ですが、キャンピングカー販売店やビルダーへの相談などもおこない導入を検討してみてはいかがでしょうか。